結果を残せないことは不幸せなのか

これがちょうど100記事目だったり、フォロワーがちょうど1000人になったりしたので、のんべんだらりと考えについて話す良い機会ではないでしょうか。





僕は人生において素晴らしい結果を残した、なんていう美点がないどこにでもいるような人間です。

でも結果を残せないからそれは僕にとっての不幸せだったかと問いかけるのですが、頭の中でイメージする自分自身はいつも首を横に振ります。
弱い自身を承認するための都合の良い幻覚だ、悲劇のヒロインを気取っている自身に酔いしれているだけだ、そう嘲笑する人もいるのでしょう。
それでも僕は、太陽が南の空に昇る頃に起きてそのままだらだら過ごす休日のような、束の間の生温い幸福感に浸っていてもいいのではないかと思えるような人間なのです。

少し訂正しましょう。
そういう人間に変えてもらったのです。

顎はしゃくれ、目の下には隈を住まわせている不健康そうな男性が僕の担任でした。名前は覚えていません。名づけ親には失礼かもしれませんが、彼の名前よりも、何十年という人生の中で培ってきた彼の口から放たれるもののほうが言葉の重みを感じられ、記憶しなければならないと何かが訴えかけてくるような気がして。それで名前は忘れてしまったのではないでしょうか。

彼はよく皮肉を口にします。相手を傷つけない程度の毒を含んだ、とてもユーモラスな皮肉です。しかし当時は検討違いな正義感を元に、人の悪口を言う奴は悪人だ、この担任も悪人だと決め付けていました。中途半端に優等生だったのです。だから彼の数学の授業の間、教科書とにらめっこをするのが常でした。悪人の教えることを聴いていては自分のためにならないとばかり思っていたのでしょう。中途半端に優等生だった僕はそれでもテストでの点数が良く、成績も1位だったために自分を立派な生徒だと履き違えていました。それが田舎の町での1番だということに、日本中に大量生産されている1番だということに気づきませんでした。理科の授業で顕微鏡を覗いてミカヅキモを観察しても具体的な大きさがわからない僕は、当然十数年生きていても世界の広さを理解してなかったのです。

学活の授業だったでしょうか、道徳の授業だったでしょうか。今はもう忘れてしまったのですが、将来自分がなりたいものを書こう、なんていう授業があったのだと思います。僕がなりたかったものは小説の中に出てくるきらきらと輝く主人公でしたが、中学生にもなって夢見がちな想像を周囲に撒き散らすことの恥ずかしさは重々承知しています。そして現実的な将来設計もしていません。悩んだ末に「立派な大人」と書きました。

席を見回っている彼が僕のところへやってきて用紙を覗き込みました。
「どうやったらなれると思う?」
「礼儀正しく、テストの結果も優秀であればなれると思います」
いかにも優等生染みた返事をしたことを覚えています。
「本当にそれで『立派な大人』になれるのかな?」
彼は笑顔を向けながら得意の皮肉を投げ、他の生徒のところへと行きました。

英語の授業で「A」を「あ」と読むのはローマ字読みだけだと教わった時のような根本の否定。彼の言葉は不思議で堪りません。テレビ画面に映る大学教授、素晴らしい文章を書く小説家、仕事をしっかりこなす教師。全て立派だと考えていました。馬鹿なことで笑いをとる芸人、稚拙な物語を書く漫画家、生徒に皮肉を言う教師。全て立派ではないと考えていました。でも彼の言葉を聴いた後では何処か納得がいかず、心は消化不良を起こしました。

「先生はどうして教師になったんですか?」
ある生徒が訊きました。彼は教壇に立ち、自身の人生について語りました。
「教師になるために大学で勉強をした。大学を卒業して教員採用試験を受けたが9回も落ちた」
具体的な内容は覚えていないですが、要約するとこのようなことを言ったのでしょう。やはり彼は「立派な大人」ではないなと頷き始めようとしました。しかし話は続きます。
「何度も諦めようとしたが支えてくれる奥さんがいる、そのお陰で挫折せずに教師になることができた。俺の人生の筋書きは100点満点のテストだったら5点くらいだろう。だけど自分が奥さんと協力していた毎日は、幸せの点数で言えば100点満点だ。俺は結果なんかよりも過程で育んできた幸せのほうが大事だと考えてるよ」
そんな根拠のない点数をつけるなんて、それでも数学教師かと呆れました。それでも、自分の人生が幸せだと堂々と語る彼を馬鹿にすることはできないな、と思えるようになったのです。最後には照れ隠しなのかはわかりませんが、とびきりの皮肉を付け加えました。
「そもそも結果が大事だったら、不老不死が1番すごいってことだな」
みんな死という結果からは逃れられないか。初めて彼の皮肉を心の底からおもしろいと感じた瞬間でした。

今日は休日なので久しぶりにハンバーグを作りました。幸せの甘い香りがするナツメグは大量摂取すると死んでしまう毒になるそうです。
僕が知っている「立派な大人」が使っていた皮肉に含まれる毒の量を思い出しながら、挽き肉に少しだけ振りかけました。

NEXNEXT

僕はこのデッキの開発に携わっていないですが、ゆりちゃんさんに頼まれたので記事を書くことに。





マナロックの殿堂によりモルトNEXTというデッキのコスト6の札、NEXTまでの時間稼ぎ、なおかつ自身が勝ち筋になりえるこのカードの後釜を探すことに。
同じスクランブルチェンジのギミックを搭載するNEXXIIのNEXがその役割を担うことができるのではないかと考える。


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デュエにゃん皇帝と壊れたループ 2

続編です。何故か皇帝の記事はこのブログのアクセス数トップなので、結構需要あるのではないかと考え筆を執った次第です。


natsumegudm.hatenablog.com

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